■知っていますか


非代償性肝硬変にもC型ウイルス排除薬             平成31年3月30日

 3月23日、東京肝臓友の会主催の医療講演会で、表記の薬剤の話がありました。この薬は今年の2月から発売されており、C型非代償性肝硬変の患者もウイルス排除が可能になります。治験では90%程度のウイルス排除率で、その後は肝硬変の症状の改善がみられるとのことです。つまり、チャイルドピュー分類Cの患者がBに改善したり、またBの患者がAに改善するといった効果が表れているそうです。

C型肝炎治療はようやくここまで来ましたが、肝がんや肝硬変になる前にウイルス排除することが重要なのは言うまでもありません。B型肝炎にも、このような薬が早く生まれて欲しいものです。

肝臓病医療のトピックス                           平成30年7月30日

 最近入手した肝臓病治療の最新情報です。治験情報も含まれています。


考籐達哉先生講演会の報告                             平成29年11月12日

考籐達哉先生の講演より

 「ウイルス性肝炎・肝硬変・肝がんの最新情報」 ~自分に合った治療を選ぶ~

 

 2017年7月30日に開かれた、第6回世界・日本肝炎デーフォーラムにおいて行われた国立国際

医療研究センター考籐達哉先生の講演から、B型肝炎、肝硬変を中心にいくつかのポイントを要約しました。

 

1.肝硬変は有効な治療法が十分に届けられてなく、もう元に戻れない病気ととえられていた。私たち

      はこれに抗すべく診療や研究を続けてきたが、やっと見えてきたという段階である。もう少し時間

      が必要である。

 

2.肝硬変には、肝不全があるかないかで代償性と非代償性に分けられる。非代償性は肝臓の機能が

      不全状態で、横断、腹水、浮腫、肝性脳症、静脈瘤など生命にかかわる合併症が出てくる。

 

3.2014年に肝臓学会が調べた肝硬変の原因は、約半分がC型肝炎、B型肝炎が12%、アルコー

      ル性肝炎が18%で、その他に自己免疫性肝炎などがある。

 

4.現在、肝硬変の方は40~50万人で、そのうち肝がんで亡くなる方が年3.1万人、がん以外の

      肝臓病で亡くなる方が1.7万人もいる。肝硬変の方は非常に大きな問題を抱えて暮らしている。

 

6.C型肝炎の代償期肝硬変では、ウイルスを排除するC型肝炎治療がいろいろあるが、非代償期の

      肝硬変では今のところウイルスを消す治療法はない。

 

7.B型肝炎でも、肝硬変がある程度元に戻る可能性がある。核酸アナログ抗ウイルス薬を5年間服用

      してウイルスを強く抑えると、わずかでも肝硬変が改善する人が7割くらいいる。

 

8.B型肝炎から肝がんになりやすいのは、年齢、男性、あるいはHGe抗原陽性といったリスク因子が

      あるが、何といっても肝硬変が9倍くらいリスクが大きい。したがってまず肝硬変にならないこと

      である。

 

9.今の治療目標は、HBs抗原を陰性化させることで、これにより肝がんの発生リスクが極めて低くな

      ることが判っている。

 

10.現在のB型肝炎治療は、一つは副作用の強いペグインターフェロンの注射でHBs抗原の陰性化を

  期待することである。もう一つは薬剤耐性のリスクがあるが核酸アナログ製剤で、ウイルス増殖を

  強力に抑制することである。残念ながら、核酸アナログ製剤でHBs抗原の消失はすごい長期間が

      必要なので期待できない。

 

11.インターフェロンには耐性変異という問題は起こらない。B型C型の経口薬には耐性変異のリスク

      があるが、最近のアナログ製剤ではこのリスクは極めて小さくなっている。エンテカビルやテノホ

      ビルはほぼ心配ない。

 

12.さらに副作用の少ないアナログ製剤としてTAFがある。腎機能あるいは骨への影響が少ない。

 

13.もし可能なら一定期間インターフェロン治療をまず試し、無理なら核酸アナログ製剤を使うと

      いうのが、現在の肝臓学会の考え方である。

 

14.核酸アナログ製剤を使用していると肝機能が維持され経過が順調で、肝がんの発症率は抑えられ

      るのは確かであるが、突然肝がんを発症して意表を突かれることがある。このことは、肝臓専門医

      の間で非常に大きな問題として認識されている。韓国のデータでは、経過良好な人のうち6年後に

      10%くらいの人が発がんした。B型肝炎には、隠れた発がんリスクの評価因子があるのではない

   かと示唆している。

 

15.したがってウイルスコントロールがうまくいっている人でも定期的な画像診断を怠ってはいけな

   い。

 

16. B型肝炎創薬は、4つの流れで進められている。一つは、B型肝炎のレセプターをブロックして

      B型肝炎ウイルスの侵入を防ぐもの、二つめはより強力で副作用のない核酸アナログ剤の開発、三

      つめは細胞核の中に潜むcccDNAというB型肝炎の目を断ち切る方法、四つめは、免疫系の活性化

      である。

 

17.肝硬変の合併症に非常によく効く薬が新しく使えるようになっている。一つは腹水のある人への

      利尿剤、二つめは肝性脳症新薬が3種類、三つめはかゆみをのある人に使える掻痒症治療薬である

      が、肝臓非専門医がご存じないことが多いので患者から問いかけることも大切である。

 

18.肝硬変を元に戻す可能性のある薬が生まれ治験段階にある。都立駒込病院の木村公則先生が中心

      になって研究が進められている。治療前と治療後を見ると顕著に繊維が取れ、しかも副作用がない。

      間もなく次のフェーズの治験が始まるので関心のある患者は問い合わせていただきたい。

肝炎医療コーディネーターとは何ですか。       平成29年5月15日

 平成29年4月25日、厚労省から各都道府県に対して「肝炎医療コーディネーターの要請および活用について」の通知が出されました。各自治体で必ずしも統一された状況でなかった肝炎コーディネーター制度に対して、厚労省は、新肝炎対策基本指針に沿って国としての統一見解を示した。

この通達の背景には、肝炎ウイルス検査を受検したのが国民の50%程度で、自覚的な受検者は

17%にすぎないと推定されることや、肝炎ウイルス検査が陽性にも拘わらず、受診していない

者が53万人~120万人いると推定されていることなど、強い危機意識がある。

そこで、多くの人が知っておくべき点を以下に抜粋する。

 

① 肝炎対策の最大の目的は「肝硬変・肝がんへの移行者を減らす」ことである。このため、

  ウイルス検査を「受検」すること、陽性者が専門医療機関で「受診」すること、適切な治療

  を「受療」すること、行政や専門医療機関が患者を「フォローアップ」することの重要性を説

    いている。

 

② 「受検」、「受診」、「受療」、「フォロ-アップ」が促進され、肝炎患者やその家族への

    支援が適切に行われるようにするために、肝炎コーディネーターは以下の役割を果たす。

 ・肝炎に関する基礎的な知識や情報の提供

 ・地域や職域における肝炎への理解の浸透

 ・肝炎患者やその家族からの相談に対する助言

 ・行政や肝疾患診療連携拠点病院などの相談窓口の案内

 ・肝炎ウイルス検査の受検の勧奨

 ・陽性者等に対する専門医療機関の受診の勧奨

 ・医療費助成などの制度の説明

 

③ 肝炎コーディネーターは以下の個所に配置される。

 ・拠点病院その他の医療機関及び検診機関

 ・保健所や市町村上記

 ・民間企業や医療保険者など職域

 ・その他、患者会、薬局や障害福祉・介護事業所、自治会

 

通知については以下に情報があります。

 肝炎医療コーディネーター通知

 肝炎医療コーディネーター通知の骨子

ダウンロード
20170430 肝炎医療コーディネーター概要図.pdf
PDFファイル 607.8 KB

泉並木先生講演の整理                     平成29年2月12日

泉並木先生の講演より

 「肝炎治療ひとすじに  ここまで来た最先端の肝臓病治療」

 

 2017年2月12日、小金井地区肝友会主催で「泉先生 病院長就任記念講演会」が開かれました。当会会員には泉先生の患者が多くいます。先生のご就任を喜び「この機会にぜひ講演会を」とお願いして開催に至りました。

 胸を打つような過去の思い出から、患者が知っておかねばならない重要なお話が伺え、大変有意義な一日になりました。以下に要約を掲載します。

なお、次号の「かんえんの友」には講演録が掲載されます。

 

1.先生が武蔵野日赤に勤務を始めた頃は、消化器内科に3人しか医者がいないのに、毎日のように

      吐血などで患者が救急搬送されていた。肝硬変・肝臓がんの人が多かった。当時の内科的治療は、

  アルコールを注入するくらいで、多くは外科的手術に頼っていた。3年生存される方は10%以下で

  、毎日この状況を見ていて、辛くて何とかしたいと思っていろいろ研究を始めた。

 

2.核酸アナログ製剤ができたことによってB型肝炎から肝硬変になる人が減った。どのような人がB型

    肝炎から肝硬変、肝臓がんになるかについて、台湾の国を挙げての確かなデータによると、ウイル

  スの量が多ければ多いほど肝硬変、肝臓がんになりやすいことが判っている。

      したがって、肝機能が正常でも核酸アナログを飲んできちっとウイルスを抑えるということが大切

  である。

 

3.核酸アナログ製剤は10年以上も薬を飲み続けるが、副作用で骨粗鬆症が起きることが判ってきた。

  そもそも、B型肝炎に感染しているだけで骨粗鬆症のリスクが高い。この他にも、血圧が高くなる

  、糖尿病も多い、コレステロールの高い人も多い、腎結石が多い、肝硬変も圧倒的に多く、B型

  肝炎ウイルスは、肝臓だけにダメージを与えるのではない。飲み薬のテノホビルは、腎臓の機能が

  悪くなるとか骨が弱くなるという副作用がある。このようなリスクが出てくるので、効果は同じで

  副作用を抑える薬の研究が進んでいる。

 

4.TAFは直接吸収されて肝臓へ入るので、副作用の元であるTFVができない。ただしこの薬は、新薬

  なので、最初のうちは2週間しか処方が出せない。長い間服用する薬として長期的に期待のできる

  薬である。実際に日本の試験で、テノホビルからTAFに変えて、ウイルスが消えてALT、ASTも

  確実によくなり、副作用を抑えるだけではなくて、効果がより一層高いことが証明されている。

  腎臓の機能についても日本人に対してすでに調べられている。

 

5.C型ウイルスは、ピアスとか、入れ墨、タトゥー等で新規に感染する人がまだ3.3万人くらいいる

  ようである。まだまだ治療をしないといけない患者さんは60~70万人いることになる。この方々に

  、いい薬ができてC型肝炎が治るということを知ってもらって治療をしてもらうことが今後の課題

  である。治るのが20%ぐらいの時代には、肝機能が正常なら治療する必要がないと言っていた。

  また、インターフェロンが効かない人には治療できないと言っていたが、効果がある薬が出てきて

  積極的に治療する時代になった。

 

6.当病院の黒崎雅之先生が、データマイニングの手法で、C型肝炎で5年以内に発がんするリスクは、

  年齢が60才以上、血小板が15万以下、アルブミンと言う蛋白質が減っている方、ASTが高い方が大

  きいと明らかにした。それぞれを突き合わして自分は何パーセントがんになりやすいかわかるよう

  な表ができた。例えば60才の男性でC型肝炎Ⅰb型、ウイルス量は6.5で血小板が14.7、アルブミ

  ン3.6、AST46、γGTP34の人は、5年以内にがんになる確率は15%である。ペグ+リバビリン治療

  を行うとあなたは72%治るというようなことが判る。これで今治療するかどうかの目安になるわけ

  で、このパンフレットを作り全国の先生方に説明した。

 

7.Ⅱ型のC型肝炎は、12週間ソホスブビルとリバビリンを飲む治療は一昨年からできるようになって

  いる。腎臓機能の悪い人には使えない。私どもの病院で140人治療して95%の方からウイルスが消

  えた。また全国の赤十字病院で、合計で787人治療して97%消えた。日本人は30%がⅡ型で、全国

  の赤十字病院で調べて消えなかったのは13人だが、主だった特徴はなく、消えない理由は判ってい

  ない。

 

8.日本人のC型肝炎の70%を占めるⅠ型の場合、ソホスブビルとレジパスビルの治療が基本であるが

  、やはり腎臓機能の悪い方には使えない。ダグラタスビルとアスナプレビルで治らなかった537人

  がすでに解析されているが、わかってきたのは失敗するととんでもないウイルスになっていること

  である。L31とY93という遺伝子がNS5A阻害剤に対して非常に強い耐性があることが判ってきた。

  治療前に、L31の耐性が4.7%だったのが失敗したら75.4%、Y93では19.7%だったのが79.6%と

  いうことで薬剤耐性が異常に高頻度になる。さらに、これまであまり知られていなかった24、28

  、30、32番と呼ばれるところの耐性頻度も上がってしまうことも判ってきた。

 

9.やみくもに誰にでも今の薬を出してはいけない。これからもまだまだいい薬が出てくるので、その

  時に治らなかったら困る。実際に我々の調べているデータでは、薬剤耐性変異の数が0個ならハー

  ボニーで100%治るが、1か所以上あるとガクンと下がる。1か所だと50%、2か所だと57%、3か

  所だと38%で、この6か所のうちの4か所だと何と0%になってしまう。ハーボニーを使っても

  ダメで、30、31、32、54、92、93の6か所をまず調べてからハーボニーを使うようにと積極的に

  啓蒙している。

 

10.がんになりやすい人を統計的に調べてみると、男性のほうが女性より3倍くらいがんになり

  すく、60才以上の方はそれ以下に比べて2.28倍がんになりやすい。血小板が少ない人、あるいは

  線維化が進んでいる人は2.1倍である。また、ウイルスが消えた時にAFPが5.2以上の人はやはり

  2.1倍がんになりやすい。この4つの因子がいくつあるかによってがんのなりやすさが違ってくる。

  肝炎の初期段階や若い時にウイルスが消えたのであればリスクは少ないが、お年を召してからよう

  やくウイルスが消えた場合のリスクは低くないので、検査は継続して欲しい。

 

11.ラジオ波でがんを焼く時に、コンピューターで位置合わせができる道具が開発された。単純なCT

  画像だけでは本当にがんが全部焼けているのか判別できない場合があったが、2枚のCT画像をコン

  ピューターで加工し、3次元画像にして焼けているところに色をつけて、はっきりと治療効果が

  わかるソフトも使っている。さらに、もう少し大きながんに対しては、その間に電流が流れる3本

  の針を使う方法も行って、1回で4~5センチのがんも治療できるようになった。この結果、1999年

  から2005年間に比べて、2006年以降のほうが5年生存率が上がっている。

 

 

ウイルス性肝臓病の医療のトピックス           平成28年11月14日

最近の新薬・治験情報

 日本肝臓病患者団体協議会(日肝協)の第26回全国代表者会議において最近の新薬・治験情報を入手しました。肝炎患者にとって大切な最新情報がまとめられています。

 日肝協代表幹事の山本宗男さんと常任幹事の米澤敦子さんが各方面の情報を整理し、「ウイルス性肝臓病の医療のトピックス」として配布したものです。

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ウイルス性肝臓病の医療のトピックス
20161101 ウイルス性肝臓病の医療のトピックス.pdf
PDFファイル 188.9 KB

肝炎対策と治療の歴史                   平成28年7月23日

7月23日に行われた「第5回世界・日本肝炎デーフォーラム」で配布された表題の資料は、大変貴重な

資料です。ウイルス性肝炎の蔓延は、戦争などの社会状況に影響を受けたと言われていますが、売血制度や注射の回し打ちなどの廃止が速やかに行われていれば、国民病と言われるほどの広がりはなかったでしょう。年表に示されるように、その後の社会を挙げての肝炎克服の歴史は、世界の中でも注目されています。しかし、この恩恵を受けることもできず肝硬変・肝がんに至った患者は、今なお社会的救済が受けられずに苦しみ、毎年約3万人が亡くなっています。

 このため、全国の患者会は、「ウイルス性肝硬変・肝がん患者の医療費助成」を最重要課題として国会請願などで訴えてきました。

B型肝炎創薬の話題                     平成28年6月14日

  第16回肝炎対策推進協議会で、表題の件で興味深い発言がありました。

B型肝炎患者は、基礎研究の進展に大きな希望を抱いています。

○脇田委員 研究班をやっております研究代表者の一人として、私の知っている範囲で少しお話ししたいと思います。B型創薬研究に関しましては、今年度が4年目ということになります。それまで日本の肝炎ウイルス研究は、主にC型肝炎の研究をしてきました。B型肝炎の創薬研究をきっかけにしまして、B型肝炎のさまざまな基礎的な研究から創薬に直接結びつくような化合物のスクリーニングといった研究まで、さまざまな研究が現在進んでいます。かなり基盤的な研究が進んできましたので、これからさらに応用的な、本当に薬の開発に結びつく、実際の抗ウイルス薬のシーズになるようなものがその研究から出てくるように我々は今、努力しているというところです。以上です。ありがとうございます。

○林会長 つけ加えさせていただきます。私、そのAMEDの評価委員をやらせていただいていますけれども、我々が最初想定したよりもはるかにB型肝炎の研究は日本で進んだと思います。従来B型肝炎研究をやっておられない方もたくさん加わっていただきましたので、かなりハイレベルのことができていると思います。AMEDの研究とは

別なのですが、アメリカのFDAで線維化を縮小させる治療薬、優先審査をやってフェーズ2まで行っている薬剤も日本発で実際ございますし、そういう面では我々の想定以上で進んでいると思いますけれども、できたら10カ年戦略でもう少し具体的なことが書けたら書かせていただくようにさせていただきたいと思います。

○大賀委員 先生、今の件に絡んで。すごく関心が高いもので、先日、ある医療講演会でもう五、六年すればとかいう発言もあったのですが、それはあり得ませんね。

○林会長 それはないと思います。先ほど脇田先生からお話がございまして、かなりベーシックなところの進歩なので、実際の治療薬になるまでかなりの年数がかかると思います。ただ、その間、現在の治療薬でも病気の進行をとめることは可能ですので、そういう面では、我々が想定したよりも大きく進んだのではないかと思っております。

 

AMED  国立研究開発法人日本医療研究開発機構

FDA       アメリカ食品医薬品局

脇田委員 脇田隆字国立感染症研究所副所長

林会長  林紀夫関西労災病院院長

大賀委員   大賀和男日本肝臓病患者団体協議会常任幹事  

C型肝炎新薬は、こうしてできた                   平成28年5月16日

   肝炎対策基本法に基づいて、厚生労働省で肝炎対策推進協議会が開かれています。患者団体の代表が、委員として参加しています。この議事録がWEBで公開されていますが、読んでいてうれしい箇所に遭遇しました。発言者はよくご存じの溝上先生です。以下引用します。

 

ーこの数年で急激にHCVの新しい薬が次々に出てきたのですけれども、これはそこにお見えになります脇田先生たちが2005年にネイチャーメディスンに出されたこの論文のおかげです。

 この論文は実は、先月末までで2,200回も引用されているくらい世界的に超有名な論文です。それで何ができたかというと、C型肝炎ウイルスが試験管の中で自由自在にふやすことができるのですね。それまではチンパンジーでしかふやすことができなかったのができるようになった。その結果、いろいろな薬のスクリーニングができるようになったし、それが新規薬剤の開発につながるし、耐性株ができても、それをちゃんとまた試験管でふやしてどういう薬を使えばいいかというのができるようになった。 ここのところはブレイクスルーなのです。これが5年後に薬として出てきて、それが臨床的にいろいろ検討されて、10年後、それから5年後にどんどん使えるようになってきたという出発点なのです。

 その結果、C型肝炎ウイルスのこの3つのプロテアーゼ、それからNS5A、ポリメラーゼ、NS5Bというところがターゲットになって、そこに対する薬が山ほど出てきて、今でもどんどん出てきているわけです。これが基本となります。その結果、2005年にできて、それから2010年ごろからこの研究が始まって、それで2013年ごろからいろいろな薬が出始めて、今、次から次に出てきている、今後出てくるという状況になっている。そういうわけで、C型肝炎ウイルスのめどがついたと言われるのはこういうことな

わけです。ー

 

注 脇田先生 脇田隆字国立感染症研究所副所長

C型肝炎治療薬で死亡例  ー患者はB型の再確認をー     平成28年4月27日

 インターフェロンフリーのC型肝炎治療薬の副作用で残念な死亡例が出ました。

希望の治療薬が生まれて、C型肝炎患者は喜んでいましたが、残念な死亡例が報告されました。

B型肝炎が活性化して1名が亡くなったそうです。B型ウイルスを併せ持っている患者は気を付けなければなりません。

 

詳しくはこちらの記事で

電話相談記録からみえるもの                   平成28年1月10日

 小金井地区肝友会が加盟している会東京肝臓友の会では、電話相談事業を行っています。肝臓に不安のある方からのどんな相談でも受け付けて適切な助言をしています。病気のことだけではなく、社会生活にかかわる相談も数多くあります。

 2015年9月29日の厚労省肝炎対策推進協議会において、患者会代表委員は、これらの活動から見えてくる患者の姿についてプレゼンテーションを行いました。患者会の幅広い活動が示されています。

 

プレゼン内容はこちらで

榎本信幸先生講演の整理                 平成27年11月27日

「B型C型肝炎・肝硬変・肝がんの最新治療について学びましょう」

 2015年7月26日の「第4回世界・肝炎デーフォーラム」において山梨大学の榎本先生の講演を

聴講しました。ハーボニーなどの経口新薬により、C型肝炎ウイルスが排除できるようになりました。

大変喜ばしいのですが、肝炎患者の油断という新たな懸念が生じています。この講演では、肝炎患者が

忘れてはいけないことをたくさん知りました。その部分の要約を掲載します。

 

C型肝炎

1. ウイルスが消えたのでC型肝炎が治った、と思ってはいけない。肝炎で傷めつけられた肝臓は傷ん

   だままである。そのあとで肝がんになる人が従来予想より多いことが判ってきた。ウイルスが消え

   てからがんになった人で10年間元気な人は、残念なことに3人に2人である。

2. 命を落としているのは、その後病院に来なかった人で、見つかったときにはがんが進んでしまって

     いる。元気な2人は、早期に手当てができた人である。

3. 肝がんの早期発見とは、がんを2cm、1円玉以下で見つけることである。そのためには、エコー

       やCTあるいはMRIなどの画像検査を定期的に行うことが必要である。

4. 1年に1度の検査で1円玉以下で見つかるのは3割である。1円玉以下で見つけるには最低半年に

       1回の検査が必要である。このためには、病院に行かなければならない。

5. ウイルスを消して、肝硬変の一番軽いチャイルド・ピューAに留まっておれば、早期のがんは治療

       できる。Aでも進行したがんは治らない。チャイルド・ピューBやCではやはり治療できない。

6. 肝硬変の患者が元気でいられる期間は、チャイルド・ピューAで平均7年、Bなら5年、Cになると

       平均1年半である。Cは末期状態といえる。ところが、今年のヨーロッパの肝臓学会ですごいデー 

   タが発表された。ハーボニーを飲んでわずか4ヵ月後、チャイルド・ピューAの人はAのままだが、

       Bの人の3割がAに、Cの半分の人がBやAに戻った。命が助かる重要な治療効果である。

7. 日本のC型肝炎の感染者は150万人で、75万人は慢性肝炎でまだ肝がんの「芽」がない。

     じっくり治療してウイルスを排除すれば十分間に合う。残り75万人の人は、がんができたりがん

       の「芽」がある。早期に治療をすることが大切である。

 

B型肝炎

1. B型肝がんになる人の3割くらいは、感染を知っているのに病院に行っていない、2割は持病など

      で専門医以外の先生に診てもらってなんとなく安心している、5割は肝臓の専門医に通っているが

      ウイルスが少なかったり肝炎が軽いから薬をもらっていない、という状況である。

2. B型ウイルスの感染を知っている人の3割は病院に行かないか非専門医に通院している。3割は専門

   医から、バラクルードを処方されている。残りの4割は、ウイルスがほとんどいないので薬を飲ん

     でいない。しかし、専門医にかかっている人からもがんができている。

3. バラクルードのような核酸アナログ剤は、ウイルスを抑えて肝硬変になるのを防ぐことができるが、    発がん抑制にはならないので、B型によるがんは減っていない。

4. 血中ウイルスが陰性でも、コア関連抗原が陽性であれば、肝臓にウイルスが残っており、がんが

       できる危険がある。

5. B型ウイルスの感染者は、コア関連抗原の値を確認しなければならない。陽性なら、血中に

     ウイルスがいなくてもがん発症の危険性がある。この検査は採血だけでよく保険適用されている。

       当然、最低半年に1回のエコー検査が欠かせない。

小俣政男先生講演の整理                           平成27年7月30日

「B型C型慢性肝炎、肝硬変治療の今後」

 2015年3月29日に東京肝臓友の会主催の上記の講演会が開かれました。聴講して患者として記憶に留めておいた方が良いと思う点を要約しました。

 

C型肝炎

1.C型肝炎は、発見までに非常に手間取り蔓延してしまった。ウイルス量が非常に少ないからで、感染

  原因は予防注射よりも静脈注射や輸血が主である。

2.これまでの新薬は、ウイルスの増殖に必要なタンパクに接着するタンパク阻害剤を組み合わせた

  ものであった。C型ウイルスは6型あり、作られるタンパクの構造が異なるのでウイルス型で薬が

      異なり、耐性株が出ると薬は効かなくなる。これに対し、ソフォスブビルはウイルス遺伝子のRNA

      鎖を切断(チェーンターミネート)してウイルスを殺す。原理的にウイルス型に関係なく効き、

      耐性株も出ない。

3.チェーンターミネーターのソフォスブビルとタンパク阻害剤のレディパスビルの合剤である

     「ハーボニ」は耐性も副作用もなく、また他の薬との飲み合わせも構わない。腎機能が30%以上

    という制約があるが、それで引っかかる人は多くない。朝1錠12週間で100%の著効で、世界

      中の30万例で耐性株がゼロの実績である。

4.製薬会社のギリアドサイエンシズ社のジェネリックライセンス戦略は、驚愕である。米国では1

      パッケージ(12週分)で1000万円、ヨーロッパは800万円、日本は600万円、一方

    後進国は2~3万円の価格ということである。世界全体のC型肝炎を撲滅するための使命というこ

      とだが、医療財政が普及のネックになりそうである。

5.肝臓に負担がかからないので、非代償性肝硬変にも適用できる。今最も急ぐことは、がんになりか

  かっている、あるいはがんを処置できて肝硬変状態にある患者からウイルスを排除することであ       る。肝臓の状態が初期慢性肝炎で、がんになるまでに10年20年ある人は、好い薬の出現を待つこと

    ができる。

 

B型肝炎

1.B型肝炎の薬の系譜はラミブジン、アデフォビルと続いたが、耐性と副作用の面で改善が進み、こ

  れからはバラクルード、テノフォビル、将来はTAFになる。

2.ラミブジンは4年で70%の耐性変異が起こった。アデフォビルは3年で10%程度の耐性変異で

      ラミブジンより良い。バラクルードは5年飲んで1~4%の耐性変異で、さらに最近使われる

      テノフォビルは、7年間の追跡で耐性変異が1例もない。ただ長期服用で骨粗鬆症や腎機能の低下

      が認められる。いづれ次のTAFに置き換われると思われる。

3.B型肝炎でウイルス量が多いのに薬を飲み続けている患者が多いが、これはすでに耐性が出ていて

      無駄な治療である場合が多く、薬を止めても肝機能は悪くならない。

肝炎コーディネーター                      平成27年4月13日

国の肝炎対策強化推進事業として平成23年度から専門知識を持った肝炎コ-ディネーターの養成が各都道府県で行われています。

 

何をするのか

・ 肝炎ウイルス検査の受検勧奨

・ 要診察者に対する受診勧奨

・ 肝炎検査の重要性や検査結果の見方の説明

・ 患者の相談に応じる

 

肝炎コーディネーターの資格をえるためには

・ 上記に必要な専門知識養成のための講習会を受講し認定試験に合格することが必要

 

対象者

・ 市町村の保健師

・ 地域医療機関の看護師や薬剤師

・ 民間企業の健康管理担当者

・ 患者

 

 埼玉県の肝炎コーディネーター養成講座はこちらに記事があります。東京都は、取り組みがやや遅れているようです。

話題のC型肝炎治療薬一覧                      平成27年4月1日

いろいろなC型肝炎治療薬が次々と生まれて、C型肝炎撲滅が視野に入ってきました。

中には、肝硬変患者に適用できるものもあります。代償性肝硬変も治癒できるようになれば素晴らしいことです。

 この一覧表は、東京肝臓友の会の平成26年度第4回理事会で出された資料で、東京肝臓友の会事務局がまとめたものです。

                東京肝臓友の会作成
                東京肝臓友の会作成

ウィルス性肝炎感染予防の手引き

   厚生労働省研究班作成の「集団生活の場における肝炎ウィルス感染予防」が東大医学部附属病院感染症内科のホームページ上に公表された旨が肝炎情報センターホームページで紹介されています。
これは昨年7月の「世界肝炎デー」で東大の四柳先生が講演された「肝炎患者が知っておくべき感染の 話」のなかで紹介のあったもので、患者さんのご家族にも、参考になると思います。

その詳細に就いてはこちらへ

新薬は専門医の処方で                       平成26年11月15日

   新薬は良いお医者さんと相談することが大切です。
最近の報道に、我々患者の期待の新薬であるテラプレビルで15名、シメプレビルで3名の死亡事例が

ありました。テラプレビルでは、皮膚障害の副作用に耐えて、1万人近くの方からウイルスが消えた筈

ですから、これらの死亡例は、尊い犠牲と言わなければなりません。

ただ、気になったのは、次の日経新聞(2014年7月26日)の記事です。
 

 死亡例の多くが、対象外としていた重度の肝硬変や肝臓がんの患者への処方だった。処方後、発疹

   など副作用の兆候を医師が見逃していた疑いのある例もあった。同社は「適正に処方するよう、

 医療機関に十分に情報提供していた」としている。


   一人の患者として、これは見逃せないと思います。いろいろな資料や聞き込みから、誤解が含まれる

かもしれませんが、次のことが判りました。
1. 薬の流通は、医者に対しては統制されていません。
   医師は、薬品会社の営業担当者から必要な情報を得て処方していますが、麻薬以外は統制されずに

   入手可能です。
2. 次々と新薬が出てくる状況では、商品寿命は短いので、製薬会社は短期間に販売しないと損失に

   なります。
3. 治験で副作用リスクが判っていたので、厚労省は、販売直後に「適正使用」についての通達を出し

       ています。医師は、患者の肝機能を週一回程度確認しながら処方する必要があるのに、肝機能検査

     の保険適用は、月に1度しか認められていないといいます。運用上の不整合と言うべきでしょう。

 

   以上が事実とすると、どのような状況が浮かんできますか。画期的な新薬ですが、理解不足から

不適正な処方をする医師に出会うと、記事のようなことが起こる可能性を否定できません。

数十万人の患者を治療するには、安心できる医師が今はまだ少ないということも事実のようです。

私たちは、信頼できる専門医から治療を受けなければなりません。

インターフェロンフリー新薬                          平成26年10月10日

今後2年以内に使えるインターフェロンフリー経口剤は以下の3種類と考えられている。


1. アスナプレビル(プロテアーゼ阻害剤)とダクラタスビル(NS5A阻害剤)の2剤併用
2. ソフォスブビル(拡散型ポリメラーゼ阻害剤)とレディパスビル(NS5A阻害剤)とリバビリンの

       3剤併用
3. ABT-450r(プロテアーゼ阻害剤)とABT-267(NS5A阻害剤)とリバビリンの3剤併用      
 
1と3は、同じ阻害剤の組み合わせなので、1で耐性ウイルスが出ると3が使えなくなるという。後から  出る薬の方が著効率が高いと予想されるのに、もったいない話である。そのため病状が待てるなら、

1より2を薦める意見の医師がいる。いづれにしても、肝臓の状態を勘案して主治医とよく相談することが大切である。

林紀夫先生講演の整理                         平成26年9月13日

平成25年10月13日、日肝協代表者会議(明石)における医療講演会
林紀夫先生の講演で、患者の常識的視点から気になったポイントを整理した。

 

1. 平成24年に日本肝臓学会のB型肝炎治療ガイドラインは、治療目標をDNA量の低下からHBs抗原の        消失に変わった。ただ消失例は少数である。
2. 日本ではエンテカビルを止められるのに飲み続けている人が沢山いる。止めてもウイルス量がそれ

       ほど増えない人が2~3割いる。止めてウイルス量が増えたらまた飲めばよい。エンテカビルを

       止めることは怖くない。
3. 講師は、肝がん予防を考えてインタフェロン治療をまず勧めており、歳をとってから拡散アナログ

       製剤を服用するのが良いと考えている。拡散アナログ製剤の服用期間が30~40年にも及ぶのは

       安全性の面で不確かな点がある。
4. C型肝炎では、インタフェロンフリーの薬で最初のものは、耐性変異が原因で15%の人に効果が

       ない。変な耐性ウイルスが出来てしまうと後の治療が難しくなる。
5. 原則として、インターフェロンとリバビリンとシメプレビルの3剤併用療法をまず勧めたい。

       C型肝炎治療ガイドラインもそのようになった。これで90%の人でウイルス排除が起こる。また、        インタフェロンには発ガン率抑制の根拠が得られているが、インタフェロンフリーの治療は、これ

       からでそのエビデンスは今のところ無い。
6. インタフェロンが効かない人や副作用で不耐容の人は、インタフェロンフリーの治療を受けること

       になるが、待てる人は著効率が95%以上の薬が出てくるのを待つのが良い。待てない人は、

       リスクを覚悟して最初の経口2剤を使うことになる。

デノボ肝炎                           平成26年8月1日

2~3年前に「治癒肝炎、新薬で劇症化」という新聞記事がありましたが、治癒後あるいは肝炎の病歴のない人でも、リウマチやがんの治療で免疫抑制剤を用いたり、化学療法により免疫力が低下すると、

ほんの少し残っていたB型ウイルスが急に増殖して重篤な肝炎を引き起こすことがあるということです。これがデノボ肝炎です。

B型ウイルスキャリアは、この名前を知っておく必要があります。

ウイルスキャリア率                            平成26年7月10日

肝炎ウイルスのキャリア率は、肝炎ウイルスに感染していることを知らずボランティア精神を持って献血をする初回献血者

集団のキャリア率から推定できる。
それによると、2000年時点で、B型ウイルス、C型ウイルス合わせて170万~180万人が、感染事実を知らないと推定される。2002~2006年には、870万人が検査を受けて、B型も

C型も共に約10万人のキャリアが見つかっている。
2000年時点のキャリアのうち、医療機関を受診したのは66%しかいない。理由は、「検査したことを忘れている」が14%、 「陰性と間違って覚えている」が10%もいる。
-----2014年3月17日第11回肝炎対策協議会議事録より-----

この人たちは重症化する危険に晒されてしまった。