「肝臓がん」に厳しい現実           平成28年    三鷹市 鷹野冬樹

            -「がん10年生存率」が語るもの-

 

 いささか旧聞に属するが、この1月20日、国立がん研究センターから、日本の主要がん患者の「10年生存率」の追跡研究の結果が発表された。この研究には全国32のがん専門病院が参加して、患者ががんと

診断されてから(当然その後、しかるべき治療を受けたのち)、10年後(途中の5年後も集計)に何人の患者が生存しているかを集計したものである。研究対象は、16種類の各種がん、対象患者数は約3万5千人に及んでいる。これを数値が厳しい順に並べると、がんのステージ別によって異なるものの、全症例の平均を部位別に言うと、①膵臓4.9%(6.5%=5年生存率、かっこ内以下同)、②肝臓15.3(32.2)、③胆嚢・

胆道19.7(23.6)、④食道29.7(38.1)、⑤肺(気管含む)33.2 (39.5)となっている。 

  これを俗に「五大がん」と呼ばれる、乳房・大腸・胃・肺・肝臓について比較した「10年生存率」(99-02年)で見ると、その間の相違はさらに歴然としてくる。生存率が高い順に①乳房80.4%、②大腸69.8、③胃69.0、④肺33.2、⑤肝臓15.3となっている。ちなみに全がん平均は58.2で ある。肝臓がんは最下位で、一旦発症したらいかに治りにくい苦しい病患であるかを物語っている。 

 もちろん、肝臓がんに限らず、すべてのがん疾患が新薬の開発や治療技術の発達によって治療効果を

上げ、これらの数値が今後改善される見通しはある。ただ、肝臓がん、とくにその末期状態に陥った患者にとっては、気慰めのようなおざなりの言葉や励ましなど、なんの効果もない「座興」にしか聞こえない、厳しい現実があることだけは確かである。 

「B型肝炎」啓発本の紹介           平成27年      三鷹市 鷹野冬樹

岩波ブックレットから「B型肝炎」啓発本を新刊
泉 並木先生も取材記事でご参加

 

 このほど、岩波ブックレットシリーズとして「B型肝炎/なぜここまで拡がったか」という新刊が出ました(9/8第一刷)。著者は、弁護士の奥泉尚洋氏と毎日新聞記者の久野華代氏のお二人、それに取材記事の形で、武蔵野日赤の泉並木先生が加わっておられます。
 内容は三つの章に分かれていて、第一章は、毎日新聞記者として、任地の北海道で取材を通じてかかわった久野氏が、B型肝炎訴訟の立ち上げから「最高裁勝訴判決」の獲得、さらにその後のB型肝炎患者

たちの「賠償請求」の粘り強い苦しい闘いの足跡を感動的に伝えています。肝炎が悪化して肝がんや

肝不全というぎりぎりの状況の中で訴訟団に加わり、分厚い行政の壁の前にむなしく亡くなっていった

患者たちの無念や、社会の冷たい偏見や無理解と闘いながら最後に恨みを晴らすことができた患者たちの喜び…などが、紹介されており、今後もつづく「訴訟闘争」への力強い檄となっています。
 第二章は、原告弁護団の事務局長として活躍される奥泉氏が、B型肝炎が国の集団予防接種のさいの「注射針使い回し」という医療政策によって、いかにして多くの国民にばらまかれ、拡散していったか、その過程を厳しい論理と弾劾の筆致によって追及しています。
 途中、「B型肝炎の感染原因をめぐる研究史」という数ページのコラムには、視野を広く過去の歴史や諸外国の事例研究をとりいれながら、日本の「一斉予防接種」という施策の異性を浮き彫りにします。
 第三章では泉並木先生が、専門医としての立場からB型肝炎の感染ルートの問題点、病状の経過や治療の見通しなどについて、的確で簡潔な言葉で、久野記者のインタビューに答えておられます。
「空前の行政犯罪」(本書扉)と言われるB型肝炎の原因や治療、将来の見通し、賠償訴訟の問題点などについて、コンパクトで適切な理解を身につける上で恰好な入門書と言えます。

(価格:520円+税) 

『がんサポート』12月号「肝・胆・膵がん」を特集   平成26年    三鷹市 K.H.

 一般向けがん専門誌である『がんサポート』12月号が、標題の特集をしています。
このうち「肝がん」に関しては、4本の記事を掲載。まず、国立がんセンターの島田和明先生が「肝胆膵」を一体の関連ある臓器として捉える考え方の重要性を提起します。昔からの「肝胆相照らす」という格言の意味を想起させます。
 ついで東大医学部の建石良介先生が、「非C非B」型の新たな肝がんの脅威と増大を紹介、それは従来の脂肪肝とは異なるメタボを原因とする新型で、将来はこのがんが肝がんの主流となるだろうと警告しています。
 3本目は、日赤の泉並木先生が、肝がんの肝動脈塞栓術(TACE)療法の適用と効果について説明、正確な病期分類による種々の治療法の正しい適用によって、その後の余命にも大きな影響が生じることを語っておられます。
 肝がんで闘病中の方は、図書館ででも借り出して一見されることをお勧めいたします。
他に、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏がご自分のがんとの闘病体験から体得した人生観を語っていて、励まされるものがあります。 

シアトル探訪                平成26年     横浜市 高井 桂三

 10月3日から13日まで娘婿の勤務先のシアトルに家内と行ってきました。在職時、出張で米国に行った事はありましたが、シアトルは初めてです。
 彼の地は航空機メーカー ボーイングの本社、工場があります。古くは先の大戦で日本には苦い思い出のB-29,現代では日本の炭素繊維使用で話題のB-787が製造されています。
 今回の私の目的は孫にも会う事ですが、何よりボーイングの工場見学で、B787のラインや、付属の航空博物館の見学で充分堪能してきました。

 また、コーヒーのスターバックスの発祥の地、はたまたトム・ハンクスの映画 ”めぐり逢えたら”の舞台になった所。そして太平洋岸ですので新鮮な海鮮料理、更にアメリカの中ではカリフォルニアに次いでのワインの産地、また富士山にも似た4000mのマウントレーニエ、その他話題の多い場所です。
 そうそう昔はイチローがいた。そして今は岩隈投手がいるMLBマリナーズの

本拠地、更にマイクロソフト社の本拠地でもあります。

 旅行と言えば、当然食が大きな部分です。されど、肝硬変患者となれば、種々制約が有り、海鮮料理のワインは若夫婦に任せ、ミネラルウォターでのお相伴でした。
 忘れてならないのは往復の機内食に減塩料理と言うのがあって、これは乗る前に注文する手間は有りますが、意外と美味しくて感心したことをお伝えします。
 気候は、割合雨の多い所との話でしたが、幸い滞在中は晴天続きでした。

講演会に参加しました               平成26年       小平市 H.K.

平成26年7月13日     最新の新薬情報を患者視点から読み解く 板倉先生

講演会の内容は会報に載ると思いますので、細かい話は書きませんが、医師の側から見たベストの治療と患者側の考え方がずれる場合もあるというような話は大変参考になりました。