小金井地区肝友会30周年によせて                                                    武蔵野赤十字病院副院長・消化器科部長 泉 並木

 小金井地区肝友会30周年、おめでとうございます。
 私が武蔵野赤十字病院に着任したのが、昭和61年ですので、小金井地区肝友会の方が1年先輩になります。赴任当初は、C型肝炎は発見されておらず、肝炎の

治療はもっぱら強力ミノファーゲンCの静脈注射と漢方薬内服のみでした。

しかし、患者さんの多くは腹水がたまった肝硬変や進行した肝癌の患者さんで、その治療にあたってきました。医師として、無力感に悩まされていました。
 1988年にC型肝炎ウイルスが発見されて、1992年にインターフェロン治療が行えるようになって、大きな変革が訪れました。ウイルスが消えて、肝炎が治癒することが可能になったのです。インターフェロンが効く人と効かない人では

何が違うのかを、東京医科歯科大学の研究者と一緒に、いろいろ調べた結果を研究論文として発表しました。この頃に肝癌の患者さんが急増し、当時行っていたアルコール注入療法では、なかなか肝癌を治す

ことができないという無力感を味わっていました。そこで取り組んだのが、マイクロ波凝固で肝癌を焼いて治療する方法です。数少ない日本の他の医師と勉強会を開いて、きちんと肝癌が治る方法を模索して

きました。この時に、マイアミ大学に招聘されて、アメリカ第1例目の肝癌マイクロ波治療のライブデモを行ってきました。その後は少し大きな癌でも焼けるラジオ波焼灼療法に変えて取り組んできました。
 C型肝炎の治療の進歩は目覚ましく、ペグインターフェロンやリバビリンによってウイルスが消える

患者さんが増加し、テラプレビルやシメプレビルによってさらに治癒率が高くなりました。最近では、

飲み薬だけでウイルスが消える患者さんが増加していますが、注意しないと治癒しなかった場合に、次の治療に支障をきたすことがわかってきました。
 B型肝炎に対しても、インターフェロンだけでなく、核酸アナログという飲み薬の進歩によって患者

さんが元気で長生きできるようになっています。
 医学・医療の進歩は目をみはるものがあります。これらの情報を患者さんに的確に知ってもらって、

療養に役立ててもらいたいと思い、肝友会の講演などでお話させていただく機会をいただきました。

また、平成23年から、武蔵野赤十字病院が東京都の肝炎拠点病院に指定されたため、都内の大学病院と

連携して肝疾患対策をすすめるために努力を続けています。
 これからも肝臓病の治療がさらに進むように研鑚を積んでいきたいと思っています。また、新しい情報を患者さんに知っていただく機会を持ち続けていきたいと思っています。小金井地区肝友会の皆様が、

元気に活躍できるように祈念いたします。